2013年04月21日

美術館で迷子になりました

Antichamberというゲームを購入しました。
このゲーム、2012年度のIGF(Independent Games Festival)で賞も獲得したインディーズゲームですが、ここ最近で一番私が気になってたゲームのひとつです。
ks_Antichamber1.jpg

見た目のビジュアルからも、無駄を完全に削ぎ落としたような明確なデザインコンセプトが見受けられ、こういう幾何学的な世界観に私は弱いと言うこともあって、是非プレイしてみたいと思ってましたが、ようやく念願かなってプレイ中です。

何とも個性的で奇怪なゲーム内容故、精神崩壊してるゲームなんて揶揄されてますが、そういった心の闇の妄想を具現化したというよりも、結構理数的というか哲学的というか、モダンアートの領域にあるようなゲームという感じで、ここでも紹介したことのあるQ.U.B.E.Portalシリーズなどに通じる、数学的なデザインが特徴的なゲームという方がしっくりきます。


元はと言えばこれ、「Hazard: The Journey Of Life」というゲームが元になっています。これは無料でプレイ出来るMODのようなデモ版で、これが「Antichamber」と名前を変え、製品版として改めて販売されたという経緯があるようです。

The Journey Of Lifeの時点で、ほぼデザインは出来上がっていて、マップの構成やゲーム展開もほぼそのままです。
ただ、操作性等でまだ不慣れな所があり、そこは製品版でキッチリ克服されてるようですね。
ks_Antichamber3.jpg


で、このAntichamber。FPS視点ですが要はパズルゲームです。つまりはQ.U.B.E.やPortalの影響下にある、その亜種ゲームと言って良いでしょうね。

さてゲームを始めてもメニューは一切出ません。そうした情報は全て壁に書かれているので。
画面右端になにやらカウントダウンを示す時間が記されていますが、これはクリア目安でしょうか。取り敢えずこの時間が過ぎても問題なくプレイは出来ます。
ただし、その下にあるYES/NOボタンは、セーブデータをクリアする物なので、間違っても途中でYESを押さないように注意です。
ks_Antichamber0.jpg

ストーリーらしいストーリーはありません。Q.U.B.E.の時と同じように、全く謎のまま先に進んでパズルを解いていく事になります。
前述したように、グラフィックは極めてシンプルかつ最小限に抑えられており、よもするとラフ画をそのまんま使ってしまった、と言わんばかりに簡略化された世界観ですが、要所要所にある色彩がピンポイントで映えるため、アートミュージアムを徘徊してるような気分になります。

所々に配置してあるヒントとおぼしき看板が、まるで作品タイトルを模しているかのようで、ミュージアム気分に一役買ってるような気が。
ks_Antichamber2.jpg

ちなみにこれら看板はなにやら英語で書かれているので、結構言語依存が高いゲームですね。でもどうやらここにはさっきまで来た道のりについて哲学的に記してる物が多いので、あまりヒントとは考えない方がよさそう。なので、理解して無くても問題ありません。結局はビジュアル部分からパズルを読み解いていくゲームなので。
むしろ、ヒントは矢印などの明確な記号で示されるので、結構親切と言えば親切。

しかし、ひたすらパズルを解くことに終始してしまってたQ.U.B.E.とは違い、このゲームは他にも大きなウリがあります。
それは、このゲームのフィールド自体が、まるでエッシャーのだまし絵のように目の錯覚を利用したトリックで溢れているからです。
ks_Antichamber5.jpg

さっきまで通ってた道が振り返ると全然違う道になってたり、見る方向が違うだけで別の空間が現れたり、どうなってんだ、こりゃ?と目をショパショパさせてしまうような演出が盛り沢山。
無限回廊とか、目の錯覚を利用したパズルゲームがありますけど、それをFPS視点のゲームにしたらこうなりました、というと結構納得かも。


途中で拾うブロックツールなる銃を使って、ブロックを配置したり取り込んだりしてスイッチをオンオフさせるような、よくあるパズルが主体なんですが、そういったパズルが目の錯覚のトリッキーな仕掛けと共にあるため、通常の常識的視点で考えてると、すぐに袋小路に入ります。

リアルで起きる常識を、ゲーム内でも当然のように起きると我々は無意識に考えてます。しかしそれが落とし穴です。
例えばゲームの中で物が宙に浮いたり、手からビームを発射しても充分非常識的ですが、これらに疑問を持つ人はいませんよね。これらは「常識の枠内を越えた」付加価値的な物であって、「常識を否定した」物ではないからです。

ところが、さっきまで通った道が違う道になってたり、同じ道が何度もループして現れたりするような現象は、ゲームであっても困惑します。それは「常識を否定した」現象だからなんでしょう。
このゲームではそういった常識を否定したトリックがあるため、これらを念頭にいれておく必要があります。この世界では、別々の部屋が1つに繋がっていてもそれが常識なんですから。
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このトリッキーな仕掛けのせいで、精神崩壊なんて言われちゃってる訳ですけど、だまし絵などのトリックは実は結構巧妙に計算しないと出来ない物なので、やはりそこはかとなく理数的な臭いはしますね。
それと、これらの仕掛けのお陰で、全く先の展開が読めないというのは、良い意味でプラスに働いています。普通に前進してるだけなのに、それすら疑ってかかるようになりますからね。


それと、パズルゲームとしてみても、結構秀逸に出来ています。前述したブロックツールを使ってパズルを解いていくことになりますが、最初の内はそれでも解けないパズルも出てきます。実はブロックツールもバージョンアップしていくので、それによってようやく解けるパズルもあるからです。
そのため、ブロックツールの進化に合わせて、行けるフィールドが増えていくのは、純粋に達成感がありますね。
ks_Antichamber6.jpg


そして、結構難易度高めのパズルもあるので要注意です。この辺は、ブロックツールを使うことで起きる挙動や法則を良く理解して熟考すればおのずと答えは導き出されますが、まあとにかく全てがさりげなく置いてあるので、気付かない人は一生気付かないんじゃないかとさえ思うような物もありますね。

パズルに慣れてない人はちょっと辛いかも知れません。でも、苦行、という程ではないと思います。つまりはパズルとしては良くできているという事です。
ちなみに下の動画はそういった巧妙なトリックを解いてる一例です。ネタバレですんで視聴の際はご注意を。



雰囲気ゲーが好きな私としては、このゲームの醸し出す、モダンアート的な肌触りは非常に心地よいです。あまりダークな側面は感じられず、その辺はQ.U.B.E.のあっけらかんとした世界観とも共通しています。

なので、個人的にはこの手の、独創的でかなりマニアックだが、割と冷静に作られた世界というのはかなりツボです。かなりどストライク。
とはいえ、こういった常識が通用しないゲームは、慣れてない人にとってはどのみち極めてマッドな作品に映るでしょうね。まあ変わってる作品には違いません。
ks_Antichamber7.jpg

でもパズルゲームとしても良くできていますし、モダンアートの中に入り込んでしまったかのような世界観は、先が読めず、一体験としては結構なインパクトがあると思います。

気になる方は、前身であるデモ版「Hazard: The Journey Of Life」が今でも無料でダウンロード出来るので、試しにやってみることをお薦めします。雰囲気やゲーム性はほぼ同じなので、一目見てピンと来たら買って間違いないです。
AntichamberはSteamで19ドルくらいで販売中です。

ks_Antichamber8.jpg
とりあえず、近代美術館を巡るような気分でどうぞ。もっとも、この美術館は入ったら最後、迷子必至の出れない迷宮ですけどね(爆)。




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posted by KS(Koumei Satou) at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | PCゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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