2010年05月02日

存在するが存在しない音

普段からやたらとマニアックな物ばかり紹介している我がブログですが、今回は輪をかけてマニアックですよ・・。一応初心者の事を考えて丁寧に話を進めて行きますが、まあ誰もが共感し興味を持てる話では無いと思われます。 まあこういった前置きを書いといてなんですけど、私自身も広く浅い知識しか持ち合わせていないルーキーなんで、同じジャンルを扱った記事にしてはあまりディープではないかもしれません。
ks_lopez1.jpg


さて、今回扱うのはFrancisco Lopez(フランシスコ・ロペス)というアーティストです。スペインの実験音楽家、音響・ノイズミュージックの巨匠とも呼ばれている人です。活動歴は極めて長く、この手のジャンルの人では大ベテランに位置します。で、彼のやってる事はというと、いわゆる音響と呼ばれる環境音楽的な実験サウンドです。


しかしいきなりロペスの事を書き始めると訳わかんなくなりがちなので、まずはその前に環境音楽について軽く解説しとこうと思います。
私の環境音楽初体験は意外に早く、中高生の頃だったかと記憶します。それは親が所有していたレコードで、Syntonic Research社が出していた「Environments」という環境音シリーズを聞いたのが最初。
音楽ではない、鳥のさえずりや波の音、心臓の鼓動などといった自然の音をそのまま延々と収録した「だけ」のレコードで、そんな音が延々入っているという奇抜さに興味を引かれました。

ks_lopez2.jpgそんなレコードを所有している親もかなりの物ですが、収録されている音自体は美しい物で、特に波の音などは延々流しっぱなしにしてると、本当に海辺にいるような錯覚を覚えた物です。
環境音楽とは、そうした自然の音をそのままの形で使用したものが最初で、その後アンビエント・ミュージックなどの分野に変貌していく事になりますが、まあ今回はそこには触れません。

こうした環境音楽が出始めた当時はまだステレオの音質がようやくマトモになり始めた頃で、その立体的ステレオ感を純粋に楽しむためのレコードだったと考えれば、さして奇異なレコードではなかったのかもしれません。

そんな訳で親も恐らくはステレオで立体的環境音を体験したくて買ったんだと思いますが、この手のレコードはもう一方で瞑想とかそういうメディテーション、心の癒しサウンドとしての役割も多分にあったと思います。実際今でもこうした癒し目的の環境音CDは良く出ていますし、自然の作り出すサウンドは心地よい音の物が多いですからね。


で、フランシスコ・ロペスです。彼の作り出すサウンドは音楽とは別次元の物であり、要するにそれは極めて環境音に近く、前述したレコードの体験と良く似た趣向を持っていると言えなくもありません。そもそもロペスはフィールドレコーディング(生撮り)によってサウンドマテリアルを構築しているので、環境音に近いのは当然かもしれません。しかし彼はそれらサウンドマテリアルを編集して加工したりミックスしたりするので、実際には存在しない音になります。なので厳密に言えば「人工的に作られた環境音」と言うのが正しいかもしれません。

以下の動画は彼の行った実験ライブの模様ですが、観客はスピーカーの位置とは逆向きで座り、目隠しをさせられます。つまり背後から音がやってくることになります。そこで鳴らされる音は、シャーっといった工場か何かのノイズのような音で、こうした環境ノイズ的な音がゆっくりと変化しながら延々続きます。


だから何・・?などと考えてはいけない(笑)。こうした音響実験は、贅沢な音響システムと立体的空間を体験してこそなので、実際にその場で音を感じない事には始まらないでしょうね。まあそれでもかなり崇高な趣味に属するライブには違いないでしょうが。


ただロペスの作り出すサウンドというのが、人工的な環境音という事もあって、非現実的な世界観を醸し出しているため、ある意味幻想的であり、そして自然音ではない、機械的な音・・・工場、機械音のような、いわゆるノイズと呼ばれるような音も交じっているので、あまり癒しっぽい感覚は無く、かなり虚無的な世界観が広がっているように聞こえます。

個人的に好きなのが「addy en al pais de las frutas y los chunches」というアルバムで、雨や風というような自然音がメインで入っているとはいえ、機械的なボーッという環境ノイズ、かとおもうと聞き取れないレベルの極小な音、廃墟と化した都市を連想させるような環境音が続き、まるでなにか物語性を感じ取れるような構成になっており、これこそがロペスサウンドの特徴だと思っています。

彼のサウンド構成はだいたいこんな感じなのですが、何か都市を連想させる物が多いように思えます。ボーッという吹きさらすような風の音、その中に交じる自然音と雑音。
ものすごい多作な人で、無題(Untitled)というシリーズはもはや200番台まで突入してるロペスですが、まあどれもこうした作品群です。まれに音のコラージュ作品など番外もありますけど。


ただ、この手のサウンドに対し、我々の方がどう向き合って対処すれば良いのか?というのは結構切実な問題である訳で、まあ音楽なんてそれぞれが感じたまま聞けばいいじゃん、なんて無責任な事も言えますけど、取り敢えずは未知の都市への招待、みたいなものとして捉えると分かり易いかもしれませんね。後はそこでどう世界観が膨らむかは各個人の想像力に任される、という感じで。


ロペスの作品は今でも普通にアマゾンなんかで手に入りますが、すぐに絶版化して滅多に再版しないため、少し古くなると入手は絶望的になります。現在5枚組のBOXセットが出ており、これが2枚組み程度のプライス価格なので、お得ですし入門としては最適かと思われます。
(最下部のリンクがそれ)

まあぶちゃけ私もそんなに頻繁にこうした環境音的実験音楽を聞いてる訳では無いんですけど、元々リスニングマニアだった私からすると(なにかっつーと周りの音や会話を録音しては楽しんでた)、同じ趣味を持っていたらしいロペスの作り出す音に、少なからず興味をそそられたのは確かです。

ただやっぱり、こうしたサウンドの原点が、ステレオの醍醐味を味わうための物だったとするなら、やはり豪勢なサウンドシステムで聞いてこその物でしょうね。実際ロペスも器材が無くなるまで、DAT媒体で作品をリリースしていたようですし、そこをこだわってこそのロペスサウンドだと。そう考えると、私は真の意味でロペスサウンドを体感出来てないですねー。使ってる器材はPCドライブだし、ヘッドホンは3〜5千円程度の物だし。ただ、音はコダワリだすと上限が無いのが恐い。繋ぐケーブルだけで何十万とか、アリ得ねえ・・・(笑)。




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posted by KS(Koumei Satou) at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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