2019年04月21日

誰が犯人か分かったけど、それより保険が下りるかどうかだな

Return of the Obra Dinnをプレイ、クリアしました。
という訳で今回はこのゲームの紹介と感想などを。
このゲーム、Lucas Pope氏が実質一人で製作したインディーゲームですが、その特徴あるビジュアルと、細部まで練られた世界観、古き良きアドベンチャーゲームの王道を行くような硬派なゲーム性で極めて評価が高く、これ程の物を個人製作するとは、この作者は化け物か天才か?と疑うレベルです。
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Lucas Pope氏と言えば、過去にPapers, Pleaseをリリースしており、これも極めて評価の高いゲームで有名ですが、実は私、個人的にあまりこのゲームにのめり込めなかった人間です。
Papers, Pleaseは入国審査官となり、入国者を審査して怪しいか怪しくないかをジャッジしていくゲームですが、ゲームが進むにつれ審査方法が複雑化していく中で、限られた時間の中で素早く審査していかなければならず、さながらパニックゲームに似た風もあり、そういうのが苦手な私はちょっとついていく事が出来ませんでした。

で、今回のReturn of the Obra Dinnです。
舞台は1807年のイギリス。4年前に消息を絶った商船Obra Dinn号が突然姿を現し、保険調査官である主人公は船を調べるため件の船に乗り込みます。
まるで昔の古い挿絵のような単一色のグラフィック。この中を一人称視点で自由に動けるだけでも中々の斬新な体験です。
この奇妙なグラフィックは、なんでも初期のころの古いパソコン画面を再現した物らしく、画像設定でマッキントッシュ等、当時の古いパソコン画面を表現した複数の設定から選ぶことが出来ます。
ゲームは公式に日本語化されており、非常に丁寧な翻訳がされているので全く問題ありません。
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さて主人公はこの船の中で、一体何があったのかを突き止め、損害額を査定し報告書を作成しなければなりません。
別に警察でも探偵でも無いため、失踪の原因を探るのが目的ではないものの、結局調べるうちにObra Dinn号の顛末を垣間見ることになりますが、その方法がメメント・モーテムという謎の懐中時計を使い、過去の残留思念を辿り、乗組員たちの死の瞬間を追体験することで謎に迫っていくというもの。

この謎のガジェットはObra Dinn号に乗船していたとされる人物から送られて来たもののようですが、詳細は分かりません。
失踪していた船の中で過去の残留思念を紐解いていく、という話を聞くと、同じく行方不明になっていた船の上が舞台の FPS「クリオスタシス」を連想してしまいましたが、ゲーム性は全くの別物です。
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過去のビジョンを垣間見ることにより、各乗組員の「安否」を突き止め、もし死んだなら「何が原因」で死んだのか、生きているなら「今どうしている」のかを調べて手記に書き記さねばなりません。
船に乗船していた乗組員が乗客も含めて60人近くおり、手記にはその名簿が同梱され、さらにその乗員の似顔絵もありますが、当然最初の内は誰がどんな名前でどんな顔をしているのか全く手掛かりがない状態から始まります。

残留思念を追う事で、手記には自動的に人物像が記載されていきますが、この人物の名前までは特定できないため、安否確認も含めてここは自分で推理していかねばなりません。
死の瞬間を垣間見るので、各人物の死因などは割と簡単に特定することが出来ます。しかし問題はそれが名簿の中の誰なのか?を突き止めること。
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このゲームは先に進んでいけば自動で手記が埋まっていって解決していく、というカジュアルな作りではないので、この辺は本当に様々な状況証拠を調べて自分で解いていく必要があります。
そのためゲームの方向性は違うものの、MYSTなどに代表されるような、かつてのアドベンチャーゲームを彷彿とさせるところがあります。
MYSTは安易にヒントをくれない不親切なゲームで、さりげなく散りばめられた謎を解くヒントを見つけ出し、観察・推理することでパズルを解いていく非常に難易度の高いゲームでした。

本ゲームもそうして、残留思念や、現状の船の様子などを観察し、自分でヒントを見つけ出していかねばなりません。
例えば残留思念の中で、ある人物がある人物に対し名前で語りかけるシーンなどがあり、これで簡単に人物名を特定できるヒントになりますが、こんなのはまだ分かりやすい方で稀です。

「ここに居るという事はもしかして○○の可能性が高い?」とか「そのセリフから察するに職業は○○?」とか様々な物から答えを導き出し、「誰が」「何をされて」「どうなった」のかを見つけて潰していきます。
これらの推理が正しかった場合、「特定された」と判断され、手記内で確定事項となりロックされて変更できなくなります。これで調査が進展していく毎に調査対象が除外されていくので、その後の推理がやりやすくなります。
しかしこの確定のタイミングが3名正解が出るごとに行われるため、恐らく総当たりによるごり押し調査を防ぐためのものと思われます。
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ゲームを進めていくと、残留思念を追って追体験するパートは早々と終わってしまい、あとはこれらの証拠を元に手記を完成させる作業に本格的に移ります。
正直、人によっては「え?これらの証拠や残留思念のヒントだけじゃ何も分からないんだけど?」と途方に暮れてしまうでしょう。
ですが、MYSTなどのゲームをプレイしたパズル好きなら、ここからが醍醐味です。実は本当に細かい所やさりげない場所にしれっとヒントが隠されているので、これらを見逃さないように探し出し、それを元に確定事項を増やしていきます。

そういう意味では、MYSTのような、非常に熟考して考察する必要があるゲームは苦手、という方には正直向いてないゲームかもしれません。
逆に私は、MYST系パズルは好物だったため、非常に楽しかったです。
しかし、ヒントの散りばめ方が非常に高度で、「流石にそれは気付かないなあ・・・」と言うのも多かったです。結局消去法で特定するケースが私の場合は多かったですね。
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実際はその方法に頼らなくても、ちゃんと特定できるヒントが殆んどの場合において用意されてます。
また、グラフィックが単一色の簡素なものなため、一見するとこの人物がどういう死に方をしているのか分かりにくく、死因を特定するのが困難、というのはネックとしてあるでしょうね。
ただこれに関しては、答えは一つに絞られてなく、これとこれとこれの死因なら全部正解、と複数用意されている場合があるので、あまり厳密に考えなくてもよさそうです。
それとヒントを探るため、あっちの残留思念を覗いて、今度はこっちの残留思念を覗いて・・・とあちこち歩き回る事になるので、そこはちょっと面倒に感じてしまいました。
後で簡単に閲覧できるようになると有難かったんですけど、それじゃあ散策する必要性がほぼなくなっちゃうし難しい所ですね。

とにかく今時珍しい、非常に硬派な推理と考察が必要になってくるゲームなため、人は選ぶ内容だとは思いますが、前述したように、MYSTのような熟考するタイプのゲームが好きな方、或いは免疫がある方には俄然お薦めです。
60人近くいる名簿の人物を全て特定するとか思うと絶望的な気持ちになりますが、少しずつ確定していって名簿が埋まっていくのは達成感があり、ゲーム体験ならではの物だと思いました。
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残留思念の描写や、過去に起きた衝撃的な事実の演出、シンプルでインパクトのあるグラフィックなど見どころも多く、見れば見るほどこれを個人製作したという事実に戦慄を覚えるのですけど、それくらい是非体験すべきゲームだと思います。
値段もさほどでもなく、ボリュームもそこまで大きい物ではありませんが、大半は推理に費やされるため、プレイ時間は人によってまちまちでしょう。
制限時間もなく、ゆっくり自分のペースで出来ますし、今度のGW、予定が無いなら、こういうゲームでじっくりと時間を潰してはいかがでしょうか。
Return of the Obra Dinnは現在STEAM等で購入可能です。



ネタバレになるので詳しくは言えないですけど、このゲームもクリオスタシスばりに結構な謎めいたストーリーになってますね。
そもそも残留思念を追えるメメントモーテムというアイテムも謎ですし。
でも、このガジェットを使って次々怪事件を解明していく、というプロットはメチャメチャ画になりそうで、これをベースに映画とか本当に作れそう。
うわ、ちょっと見たくなってきたぞ。

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posted by KS(Koumei Satou) at 22:38 | Comment(0) | PCゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

デスクトップの有様はその人の生き様そのもの

今回は映画「サーチ(Search)」をレンタルで見たので、その感想を書こうかと思います。
この映画、どこかで予告を見て以来、非常に気になってた映画でした。

とにかく、PCのデスクトップ画面をただひたすら映しているだけで物語が進行していくという非常に斬新な、そしていかにも現在のネットSNS時代を象徴するような内容で、これは凄く面白そうだな、とすぐに思えたからです。
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c 2018 Sony Pictures Worldwide Acquisitions Inc. All Rights Reserved.

ただ、斬新とは言いましたが、これより以前にPC画面を映しているだけでストーリーが進行していく映画と言うのは実はもう既にあって、アンフレンデッドというオカルトホラーが最初と言われてます。
この映画はネトフリで見たのですが、チャットルームに死んだはずの友達のアカウントが入ってきて、次々とおかしなことが起こり始めるという言わば密室ホラー物です。
確かにこの映画の見せ方も凄く斬新と言えば斬新な映画なんですけど、そこで描かれていることは非リアルな内容で、そして密室ホラー映画なら何度も見飽きたような展開そのままなんで、「うん、まーいつものB級ホラーだなあ」程度の感想しか残りませんでした。

で、この「サーチ」ですが、こちらはあるアジア系アメリカ人の家族の物語で、ある日突然娘と連絡が取れなくなってしまった父が、PC上で様々なツールを介して行方を追っていく、というミステリーサスペンスになっています。
なおアジア人家族が主人公ですが、監督はインド系の人で、舞台はアメリカのハリウッド映画です。


とにかくまずこの映画、出だしが秀逸です。
当然この映画も終始PCのデスクトップ画面を見せていくのですが、家族の現在に至るまでのあらすじを、PC上に思い出を残したりスケジュール管理をするという作業を見せることで、しっかり説明しているところが凄い。
何というかもう、マイクロソフトやアップルが「これであなたの人生を紡いでいこう」みたいな感じでCMでやりそうな内容でもあり、「あーあるわーこんな感じ」って思わせるところも面白いですね。
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あとは、音信不通になってしまった娘を心配した父親が、残された娘のPCを手掛かりにあれこれ情報を検索していくという話なのですが、ビデオチャットなどで相手と話すシーンが大半とはいえ、娘の情報を探るため、色々検索したり、娘のFacebook等の履歴をチェックしたりと、色々PC上で作業するシーンも多く、ここが特に面白い、と思えたところでした。

いわば、鍵となりそうなヒントを見つけるまでの過程を追体験で見ているような感覚に近く、それは言ってみればYoutubeでゲーム実況を見ている感覚に近いのかもしれません。
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また、この話では当然誘拐などの可能性もあるので、警察もガッツリ絡む話に発展し、担当刑事と共に事件を追っていくという展開も個人的には斬新に思えました。この手のミステリーサスペンス物になると、怖さを演出するために当事者が単独で乗り込んでいく話になりがちで、それが凄く現実味が薄れる行為なので、そうじゃない展開なのは凄くリアル路線になってて良いと思いました。

そしてミステリーとしての完成度も高く、私は正直オチは読めなかったので非常に楽しめました。徐々に父親が自分の知らない娘の姿などの驚愕の事実を知る過程はよくある展開とは言え、それをSNS等の情報から得るというのも、この映画らしい展開ですね。
また、ニュース映像や、監視カメラ映像などを介して物語を伝える手法も使われていますが、これも一応PC上の動画配信サイトやPCツールから見ている、という体になっており、かろうじてコンセプトから外れないようにはなってます。まあ若干強引ではありますけどね。
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とにかくPC上の画面で展開する物語、という特異性を最大限に発揮した映画で、アンフレンデッドがやり切れていなかった表現をも実に見事にやってのけた映画だと思います。
これはアンフレンデッドにもあった演出ですが、書き込もうとした内容を、一旦考えたのちに削除して入れなおす、というシーンが度々あり、これは「SNSあるある」で誰もがやった事があると思いますが、映画サーチでは、微妙な親子関係をこれを使って表現しており、実に巧みに使ってるな、と思いました。

父親が娘にとても依存してて、ちょっと暴走気味なのは、人によっては若干引いてしまいそうですが、それもまた、映画の展開がどうなってしまうのか、という一抹の不安感に一役買っており、まあ私は自然に見れましたね。
というか父親ならこれくらい取り乱して当然、という感はありますから。
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先にも話しましたが、ミステリーとしての出来も秀逸で、徐々に新事実が明らかになっていく過程や伏線が回収されていくのも見事でしたし、デスクトップ画面のみという展開の割には画面内はめまぐるしく変化があり、全く退屈せずに見ることが出来ました。
なんでも監督はシャマラン監督のファンであるらしいのですが、シャマラン監督とのテイストとは違うでしょうけど、なんか微妙に近い息吹はあるような気はしましたね。

まあとにかく見て損は無い満足度の高い映画でした。非常にお薦めです。
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ところで、ブレア・ウィッチ・プロジェクト等で一躍注目を浴びたPOV方式の撮影法はあっという間に広まりましたが、このPC画面のみの撮影法もまた、そんな新たな演出法として広まるのでしょうか。

流石に見た目の感じがほぼ一緒になるので個性が出しにくく、ちょっと難しいかもしれませんけど、例えばゲーム画面とか、それを中心とした映画とか、なんか成り立ちそうじゃないでしょうか。
オンラインゲームを題材にした作品は結構あるけど、終始そのゲーム画面をそのまんま表現して物語を展開したものはまだないんじゃないですかね。例えばゲーム実況者を主人公にするとか。
もうそうなっていくと、普通にインタラクティブなゲームと境目が無くなってややこしい事になりそうですが・・・・。

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posted by KS(Koumei Satou) at 23:27 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする