2016年08月21日

よし、ここは大丈夫、カチッ、ん?

今回はHalf Deadというゲームを紹介します。
200円以下という格安ゲームなので、一発ネタ系というか、そんなにやり込むような内容の物ではないですけど、良くできているので軽い気持ちでトライして欲しいゲームです。
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このゲーム、トレイラーを見ただけで、「あれ、なんかに似てない?」と気付く人も居るかと思います。
そう、このゲームは映画「CUBE」に思い切り影響を受けたゲームなんです。
・・・というか、もう映画の内容ほぼそのままじゃん、て感じですが。


映画「CUBE」は立方体で構築された謎の部屋に閉じこめられた人達が脱出する話で、部屋の幾つかにはトラップが仕掛けられているので、それを避けながら出口まで進んでいく、というまるでゲームのようなストーリーでした。
当然ゲームのような話であるからして、その後ゲーム等で与えた影響はとても大きく、同じような世界観、特に理不尽で意味不明な状況に一般市民が巻き込まれる、というシチュエ−ションは一時期流行りましたね。今でも多く散見されますが。

このゲームは、もう影響を受けてるとかいうレベルの話でなくて、映画のCUBEの世界を再現しようという試みに近く、ゲームの目的は映画と全く一緒。
トラップの仕掛けられた部屋を避けつつゴールを目指す、という単純明快なもの。

とはいえ映画では建物の構造が縦横立体的に繋がっていたのに対し、Half Deadではシンプルに2次元方向に伸びてるだけです。
つまり上や下の階は省かれています。
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ゲームを始めると、部屋の規模や難易度を決めることが出来ます。デフォの7x7で丁度良いのでそのまま始めて大丈夫です。

部屋は四角形で、隅でない限り、4方向に繋がっています。今自分が立っている場所にはトラップが無いことは確定しています。どこかの扉を開けて進むしかないのですが、部屋を覗いても視覚的には全くトラップがあるかどうかを判断することは出来ません。
そのため、確認するためには中に入るしかないわけで。

中に入って何事も無ければ安全な部屋、と言うことになります(ミニマップに白いチェックマークが入る)。しかしもしトラップ部屋だった場合、反応して何かが飛び出してきます。
トラップには回避可能の比較的安全な物と、入ったら最後、脱出不能の即死トラップの2種類があります。回避可能な場合は、すぐさま部屋に戻るか、避けて進むことで即死は免れるため、大して驚異ではありません。一度トラップを避けるともう出なくなる物もあるので、それ系の場合はラッキーです(ミニマップにはオレンジのマークが付く)。
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ただ即死系の場合は扉を塞がれてしまうため、発動したらもうジ、エンドです(ミニマップには赤いマークが付く)。


このままでは死を覚悟で突っ込むしか方法が無いため、トラップがあるかどうかを確認する方法が他にも用意されてます。
それが靴を部屋めがけて投げ込むというアクションです。
これは映画でもあったシーンですね。センサーでトラップが反応してるのだから、物を投げて作動するかどうかを確かめる、というわけです。
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ただし、もし投げた部屋にトラップがあった場合、投げた靴を回収出来なくなってしまう事が多いです。特に即死トラップだと扉を塞がれてしまうのでどうにもなりません。
靴は当然2足しかないですから、非常に貴重であり、乱用するわけにもいきません。ではどうしたら良いのか?他に手はないのか?

実は各部屋には暗号が示されています。暗号と言ってもシンプルな物で、青、緑、黄色、ピンク、赤の5色のコードで構成されてます。
実はこれ、今居る部屋を中心にして、一体いくつトラップ部屋があるかを示しているのです。
青なら繋がっている4つの部屋全てが安全、緑ならどこか一つがトラップ部屋、黄色なら2つ、ピンクなら3つ、赤なら全てがトラップ部屋、という法則です。
映画でもトラップ部屋のあるなしに法則があったので、その再現にもなってます。

勘の良い方なら既にピンと来た方も居るかもしれません。実はこれ、要するにマインスイーパなんですよね。
一方向の扉の先がトラップがあると分かっている場合、今居る部屋で示されているコードが緑だとすると、残り3つの部屋は安全だと確定できます。
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このようにして、マインスイーパよろしく消去法で安全な部屋を特定し、そこに向かって進んでいく、というのが本ゲームの醍醐味なのです。

Oボタンを押すことでマーキングモードになり、ミニマップやマップ上にマーキングすることが出来ます。つまり怪しい箇所を特定したら、そこに目印を打っておく、というまさにマインスイーパさながらの機能が備わってるわけですね。

安全な部屋を見つけては各扉から覗いたコードを参考に照らし合わせ、道筋を確保していく。言ってみればこれは、マインスイーパをそのまんま一人称視点でやってるのと同じですよね。そういう意味じゃ中々面白い試みのゲームです。
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ただ、マップの構造はランダム生成なため、調べた結果全ての道がトラップで塞がれてる、みたいな状況に陥ることも多々あります。中には回避可能なトラップがあるので、そこを見つけて通り抜けるしか手はないわけです。
あるいはどうしても特定仕切れない箇所が出てきたりと、八方塞がりな状態になったらいよいよ靴投げの出番。

こうして、マインスイーパ的推理と、靴投げによる運試しをしつつゴールを目指す本ゲームは、そこそこ頭と運を使う暇つぶしゲームになっており、個人的には非常に楽しめました。

特にマインスイーパ部分はシンプルに単純化されたに近いので、コツが分かると結構スムーズに特定していくことが出来ます。
とはいえ、ついうっかりと予想が外れている事もあり、余裕ぶっこいて部屋に入ったら串刺しになって即死・・・なんてことも。
マインスイーパよりも食らった時のショックがでかいのでビビリますね。

また、映画にはない要素として、トラップとは全く関係なく、プレーヤーを殺そうと徘徊してる敵キャラや、扉の上に設置されたレーザーなんかがあるため、いくら先が安全だと分かっていても気が抜けません。
扉を開けた途端、頭上からレーザーを放たれて即死、敵が飛び込んできて触れたら即死、とかこれまた結構ビビリます。(自爆する奴が多く、靴を残していくのもいたりします)

これらは部屋の暗号コードとは無関係なため注意が必要です。
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あと、時々プレーヤーと同じような境遇のNPCが部屋に居ることがあるんですが、これも映画のオマージュですかな?
ちなみに、彼が部屋に既に居るからと言って、トラップが無いとは限らないのでご注意を。


グリーンのボタンみたいな物が出てくれば、そこがゴールです。ちなみにランダム生成だと、スタート付近にある事も希にあり、さあ捜すぞーと思ったらあっさり見つけた、なんてことも。
ゲームモードで、必ず遠い位置に配置するモードもあるので、そちらを選ぶのが良いかもしれませんね。まあ逆にこれだとある程度位置が特定出来てしまうという向きもありますが。
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マインスイーパ的要素のおかげで割と中毒性のあるゲームであり、暇なときにちょちょいと出来る内容もあいまって、中々の良ゲームです。
ただ値段が値段でシンプルな内容には違いないので、割と飽きるのは早いかも。今後色々と新たなモードが増えると楽しいんですけどね。

ちなみにマルチプレイモードでは複数人数で同時にゴールを目指すようになってて、対抗したり協力したりと色々あって中々楽しそうですが、私はマルチ苦手なので試してないです。

Half-DeadはSteamで購入可能です。
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ちなみに映画CUBEは私も好きだけど、それはあくまでアイデアが好きなのであって、この手の映画で描かれる、一般人が巻き込まれる形で死のゲームをやらされるというシチェーションは、実は個人的に好きじゃないんですよね。
それって、カイジみたいに権力者が弱者を弄んでるようなもので、非常に鼻持ちならない。
このHalf-Deadでは、犯罪者が刑罰免除を賭けて命がけのゲームを挑む、という設定になってます。(なんかシュワちゃん主演でこんな感じの映画もありましたねえ)
もし本当にこんなバラエティ番組が出来たら、やらせる方も見る方も同罪ですな・・・。




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2016年08月14日

さあ抜き打ちチェックの始まりだ

INFRAというゲームを購入、プレイしクリアしました。
日本語には対応していないゲームですが、有り難いことに日本語MODが出回っているのでそれを適応してのプレイとなりました。
というわけで今回はこのゲームの紹介行きます。
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ちなみに日本語化出来たとは言っても、かなり必要最低限な日本語化であることは留意すべきでしょう。
一応全ての会話シーンの字幕は日本語化されてますが、フィールドにある文書や看板等のテキスト系はほぼ訳されていません。
ゲーム攻略上どうしても訳されていないと分からないテキストのみ日本語に置き換えられているだけです。
なのでゲームを進めていく上では問題ないのですが、ストーリーを補完するという意味ではどうしても割を食ってしまうのは残念です。
まあそうなると膨大なテクスチャの作り替え作業になるので致し方ないですね。
なお、オプション・AUDIOのCaptioningでSUBTITLES等を選ばないと字幕が出ないのでご注意を。


さて、このINFRAと言うゲームは、水道、電気、交通網といったインフラ設備を管理するというのが目的の一風変わったゲームです。
主人公のマークは、ナショナル・コンサルティング・グループというコンサルティング会社に勤務する男で、この会社の業務形態がイマイチ分かってないのですが、恐らく建築関連の設計・管理を担っているものと思われます。
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ゲームは会社での早朝ミーティングからスタートし、今回メンテナンスすることになったインフラ設備の視察を行う、という大まかな概要を説明されます。主人公はダム付近をチェックする担当となり、現場にまずは向かうことになります。

INFRAはHalf-Lihe2やPortalでお馴染みのソースエンジンで作られていますが、非常にクオリティは高いです。ソース系のグラフィックは見慣れているため既視感はありますが、非常に細かく作り込まれており、特に冒頭のオフェス内を取ってみても、いかにも現代のモダンな会社って感じがでていて素晴らしいですね。


さて、現場に到着すると、いよいよ本編の始まりです。各施設を回って、建物のメンテ状況をチェックします。
チェックの仕方は簡単で、明らかに状態が悪い箇所、例えば故障している、崩壊しているといった部分をカメラに納めるだけです。

もちろん手当たり次第に撮影すれば良いわけではなく、明らかにインフラ系統に障害をもたらしていると思われる物のみ撮れば良いでしょう。該当する物を撮影すると、音や主人公のセリフが出るので判断が付きます。
どのみちカメラには電池が必要なので、あまり撮りすぎてるとすぐに充電がなくなってしまうので注意。
同じ理由で懐中電灯も付けっぱにしてるとあっという間に暗くなるので乱用は禁物。道中、電池は結構拾えるので心配ないですが、電池満タンでもリロードして消費してしまう恐れがあるため細心の注意が必要です。
なお、証拠となる文書やデータも撮影対象になってるっぽいです。
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こうして建物の状況などをこまめにチェックしつつ散策していく事になりますが、じつはぶっちゃけカメラによる撮影はゲーム攻略上必須ではなかったりします。つまり、そこをスルーしていてもクリアは出来てしまうわけで。
あくまでカメラは実績解除に関わってるだけなので、それが気になる方だけ注意してればいい、って感じです。
まあ、ロールプレイしてるとどうしても撮りたくなるから良いんだけどね。

実はこのゲーム、基本的に前にひたすら進んでは、カギやスイッチを押したり見つけたりしてパズルを解いていく「だけ」のゲームであり、要約してしまうと雰囲気ゲー、ウォーキングシュミレーターのたぐいだと思ってもらって間違いないです。

ひたすら進むだけの淡々な内容とはいえ、本当に淡々と言うわけでもなく、それなりにハプニングがあったり、ストーリー的にきな臭い雰囲気が出てきたりと、それなりに展開はあるゲームです。チャプター毎に施設は大きく異なり、雰囲気がガラっと変わるので見た目にも色々あって楽しめるでしょう。

個人的に思ったのは、ソースエンジンという事もあるでしょうが、戦闘要素を一切排除したHalf-Life、というイメージがしっくりきました。こちらの意図しないハプニングに見舞われ、遠回りして何とか目的地にたどり着こうとする、という側面はどちらも一緒ですし、Half-Lifeシリーズもまた、戦闘以外に色々とパズル的攻略要素は多かったですからね。
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そういう意味じゃ、昔からよくあるタイプのゲームとも言えるので、別段目新しい要素は無いのですが、施設のメンテチェックというあまりないシチュエーションやストーリーはある種斬新であるため、そのおかげでなんとか持ちこたえているという感じです。
でもやはり雰囲気ゲーには違いないので、それ系に免疫がなければ、退屈に思えてくるかもしれません。訳が必要最低限なため、ストーリーを追うのも難しいので。

ただ、雰囲気ゲーが好きな人にとっては、このゲームは結構楽しめると思います。ストーリーの関係上、朽ち果てた施設が結構出てくるのですが、これが相当こだわって作られており、既に使われなくなった建物の儚さまでも感じるくらいです。
こういったインフラ施設の内部がどうなっているのかは実際に見たことはないので定かではありませんが、攻略上行く必要ない場所までわざわざ見せるためだけに細かく作られているあたりを見るにつけ、すごくリアリティ重視のゲームなんだな、という感じがします。、
まあリアルなのかどうかはともかく、ひとつの世界観を完全に構築して、あたかもリアルに見せている、というこだわりはひしひしと感じました。
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特に廃墟マニア系の人にはたまらないのではないでしょうか。ゲームの中でも、外でも、スクショを撮りまくってしまいそうです(笑)。
私は廃墟マニアという程の人間ではないから、そこまで興奮はしないけど。まだ綺麗に整った建築物の方が好きだからね。でも、廃墟の持つ独特の美しさ、儚さには共感するのも事実で、このゲームにおける廃墟描写が相当にクオリティが高いのは間違いないです。


ゲーム的には、前述したようにカギを拾ってドアを開けたり、施設の電気系統を正しく設定し直して道を開いたりするなどの簡単なパズル要素を解いて進んでいくことになります。
内容的にはシンプルで単純ですが、要所要所で行き詰まることになるでしょう。実は鍵とかのアイテムがしれっと隅に置いてあったりするせいで見逃したり、電気系統のシステムがぱっと見どういう仕組みになってるのか分からないせいで右往左往、というのが多々あるからです。

まあ電気系統のパズルはゲーム的に簡略化されているので専門知識は要りませんが、そういうのに慣れているのとそうでないでは結構違うのでは、というのは感じましたね。慣れてない私は、色々ボタンを押しては、周りの変化を見て推測、という感じでしたけど。
まあそれで正解を導き出していくのはパズルの王道っちゃ王道ですけど。
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あと、マップがやたら広くてあちこち行けてしまう、というのも災いして、どこで何をすれば正解なのか分からず、行ったり来たりを繰り返し気味でした。
ストーリーを中途半端にしか理解出来てないのもあるでしょうが、ヒントもないし、会話のログも見れないので、結構不親切なゲームではありますね。
もう少し主人公自身に今後どうすべきかを喋らせるとかすれば難易度も下がったでしょう。
まあゴードン並に無口ではないですけどね、本主人公は。

個人的に、トロッコの箇所が分からなくて立ち往生しましたね。実はボタンが小さすぎて反応してないように見えたってオチだったんですけど。リアル重視でボタン系統が小さめなので、この辺も注意が必要です。
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あと、戦闘要素は無いと言いましたが、軽くアクション要素はありますので一応。あまりイライラする物はないので良いですが、中盤にある川下りは結構長くてちょいイラッと来たかな(爆)。操作方法も説明されないから慌てました。
そんなわけで場面によってはあっさり死ぬことも多いのでご注意を。一応セーブやオートセーブもあるのでこまめなセーブは忘れずに。
ちなみに段差の前で前進しながらジャンプするとスっと登ることが出来ます。これを知らないといざって時にスムーズに登れないので覚えときましょう。


ゲームは一本道ですが、寄り道通路が結構あります。発見できぬままの箇所もまだあるようでしたし。正解の道が開けず行き詰まることも考慮すると、そこそこ時間かかるゲームですかね。私も一週間くらいかけてじっくりプレイしました。
ネタバレになるため詳しくは言えませんが、ストーリー的には結構中途半端な所で終わります。まあよくある、「え、ここで終わり?気になるぅー!」というTVシリーズでよくあるやつですね。
既に続編を出すと言うことが告知されているので、そこで明かされていくと思うのですが、この一種独特なストーリーをどういう結末に持って行くのかは興味ありますね。
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ただ、また誰かが日本語化してくれないと・・・という他力本願丸出しなのがどうにも。


INFRAはSteamにて購入可能です。
前述したように一応日本語化出来ますが、完全にストーリーを把握できるわけではない点はご注意。もちろん、大筋はちゃんと分かるので概ね大丈夫ではありますが、一体何があったのか、というのを掘り下げるという意味では割を食うわけで。バイオショックシリーズで、殆どのオーディオログを無視してる状態、と言うと分かりやすいでしょうか。
それでも雰囲気ゲー好きには必見のゲームのうちのひとつと言えると思います。

このゲームと実際どこまで関連性があるかどうかは定かではないですけど、森の山火事を監視する仕事を扱った「Fire Watch」も、似たように状況チェックが大筋のテーマなので、こういう地味だが重要な業務にスポットが当たるのは一種の流行なんでしょうか。
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まあ特殊部隊やら傭兵やら、物理学者やら、そういう超プロフェッショナルの仕事は今まで散々あったから、こういう「ゲームの主人公にしてどうすんの?」という職種が選ばれてるのは純粋に斬新で面白いですけどね。
どういうゲーム性にするのはかはともかくとして。



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2016年08月07日

能ある鷹は何故爪を隠したか

ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを捜して」をレンタルで見ました。
今回はこの映画の感想を書くとしましょう。

一部では結構話題になったこの映画、何しろ膨大な数の写真を撮っていながら、一度も作品を公表することなくこの世を去ってしまった謎の女性写真家が居た、というセンセーショナルな筋書きを見たら、興味が湧かない訳はありません。
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(C)2013 RAVINE Pictures, LLC.

この映画を撮ったのは、そもそも彼女の存在をこの世に発掘した張本人(ジョン・マルーフ)によるものであり、言ってしまえば映画など撮ったことのない素人です。そのためか映画の内容は非常に淡々としたものでした。


歴史家であったマルーフが資料を捜す名目で、過去に取られた写真(ネガ)を中古で捜していたのが始まり。
オークションで大量のネガが出品されているのを発見し、彼はそれを買い取ったのだが、それがヴィヴィアン・マイヤーによる写真だった。
幾つかのフィルムを現像しネットで公表してみると、「素晴らしい写真だ」と大反響。
しかし、幾ら調べても「ヴィヴィアン・マイヤー」なる人物の情報が得られない。
しかし彼女の残したネガは次々見つかり、15万枚にも及ぶ膨大な数となった。
何故彼女はこれだけの写真を撮っておきながら一枚も世に公表しなかったのか?
そもそも彼女は一体何者だったのか?
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淡々とはいえ、一人の謎めいた人物を追ったこのドキュメントは極めて興味深かったです。
あらすじを見ると、もう何かのミステリー小説みたいな感じですが、実際彼女はとてもミステリアスな人だったようです。
乳母(ナニー)であった彼女は、自らを写真家だとは公言しておらず、あくまで趣味として写真を撮っていた節があります。

しかし実際彼女の撮った写真は非常に魅力的です。センセーショナルな部分が先行してしまうため、それで持ち上げられてるだけではないのか、と勘ぐりもしたくなりますが、写真の分からない私でも「あ、いいなこれ」と直感的に感じてしまうのですから、世界中の人が熱狂したのも頷けます。
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(C)2016 Maloof Collection, Ltd.

それにしては15万枚という数は趣味の範疇を超えています。知人だけには配ったり送ったりしてた、なんてなプライベートな範囲ですら見せていなかったのですから、純粋に「なんで?」と首をかしげざるを得ません。


しかし、映画をみるとそれなりに彼女の人となりのヒントは垣間見えます。
自分を写したセルフポートレイトが幾つか出てきますが、そこで写ったマイヤー氏の顔をみた私の第一印象は、
「なんか凄い闇をかかえてそう」でした。
こればっかりは感覚的な物で何とも言えないのですが、お世辞にも彼女の顔は健気な物とはほど遠く感じたのです。
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(C)2016 Maloof Collection, Ltd.

生前の彼女を知る人達のインタビューで分かることはそれを裏付けるもので、気難しくて口数少なく、変わり者だったということ。この辺は皆共通したマイヤーに対する印象みたいで、要するに少し近寄りがたい変人、という感じでしょうか。


それにしては、彼女は乳母という職に就き、沢山の子供達と一緒に時間を過ごしていたことになります。人付き合いが苦手、というような内向的な人間がやるような仕事じゃありません。そういう意味では彼女は決して人見知りではなかったのでしょう。
実際、彼女が撮った写真の、大半の被写体は人物像です。
これは彼女の写真がその他大勢のアマチュア写真と一線を画する大きな理由の一つだと思います。

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彼女はローライフレックスというカメラを愛用していました。このカメラ自体が味のある良い写真が撮れてしまうため、多分にカメラの性能による影響もおおきいのでは、とも取れるのですが、これでアマチュアが撮ってもせいぜい風景写真に終始してしまうのがオチです。

しかし彼女は街行く人達を切り取るように、あるいは肖像画のようにアップで撮ったりしています。だからこそ彼女の写真は他の写真と大きく違く見えるのだと感じました。
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(C)2016 Maloof Collection, Ltd.

今じゃスマフォやデジカメでトイカメ風の写真を簡単に撮れるため、ど素人でも良い感じの写真を残せる時代です。
下の写真はスマフォアプリのHipstamaticで私が撮った写真で、そこそこ良い感じの物が取れたと思うけど、やっぱり所詮はただの風景写真。

ヴィヴィアンマイヤーのような、その時代、その時間を切り取ったような写真を見るに付け、プロとアマ、写真に対する向き合い加減の違いを大きく感じます。
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それと個人的意見ですが、彼女によるローライフレックスの写真がスクエアの正方形だったというのも、インスタグラムなどでスクエア写真が一般的に浸透している今の時代にフィットし、大きな反響を得た一端を担っているのではないか、とも勘ぐってしまいましたが。
(まあ彼女の発見直後にインスタは流行ってなかったけども)

彼女の代表的な写真の一部は公式サイトで見ることが出来ますが、意外だったのは、70年代以降に撮られるようになったカラー写真。
実は個人的にはモノクロよりカラー写真の方が魅力的に見えました。有名なライカ等で撮ってるようなのですが、色合いと言い、構図と言い、もうアマチュアって感じがしないですね。
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(C)2016 Maloof Collection, Ltd.

しかし、こういった写真を見る度、どうしても「なぜ公表しなかった?」という想いに立ち返ってしまうのですが。
映画でも色々憶測は出てますが、結局彼女が亡くなってしまった後では、その真相は永久に闇の中です。
それだけに、マルーフ氏が2007年にネガを発見し、最初にネットで公表した次点ではまだ彼女は生きていて、本格的な捜査が始まった頃には既に亡くなってしまっていたのが本当に口惜しい(2009年没)。
映画を撮っている時にまだ彼女が生きていたのなら、彼女ははたしてこの大量のネガをどうして欲しいと言ったのでしょうか。今の大反響をどう感じたのか。
「きっと嫌がっただろう」「あと一押しの勇気が持てなかっただけだから好意的に受け取るだろう」色々憶測は言えるけども、明確な答えがでるわけもなく。

ちなみにアマゾンのレビューで本映画に対し「マルーフ氏が他人の遺産を利用して金儲けしてるだけ」とか辛辣な意見が出てて。はあ?と思ってしまいましたが。

15万枚ものネガを掘り起こしたマルーフ氏の行動力は並大抵の物とは思えません。あらゆる場所からマイヤー氏のネガを買い集め、美術館に保管を願うも断られ、結局自ら写真を管理・現像する事になったのですが、実際凄い時間とお金が掛かっているでしょうし(発見から映画公開まで6年もの歳月がかかっている)、その熱意は、多少邪な気持ちがあったとしても、賞賛に値すると思います。
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マイヤー氏がそれを望んだかどうかは結局知る由もないけど、少なくとも我々が知ることが出来たことの意味は大きかったと思います。
なにしろ、貸倉庫に大量にあったネガは行き場を失い処分されかけていたのですからね。
まあ要するに、マルーフ彼自身が一番の彼女のファンなんだな、と言うことに尽きると思うのですが。つまるところ、彼女の写真のファンといより、彼女自身のファンっていう意味での。


でも、ファンの想いと作者自身の想いは決して相通じるものとは限らない、というのを、以前ここでも紹介したことのあるゲーム「The Beginner's Guide」でつい考えてしまうのですけど。

そう思うと、ますますマイヤー氏の心情が謎に満ち、不可解ですね。
でも、ひょっとしたら、というのはあって、彼女が一切写真家という肩書きを名乗らなかったのは、「自分に写真家などと語る資格があるとは思えない」という、自虐的な一面があったのでは、という推測です。
自分の世界に引きこもってる人間ってのは、基本的に社会のはみ出しものって意識が強いから、自分の作品が受け入れられる訳がないって思いがち。だから怖くて世に出せない。勇気を出して見せて「くだらない」ってもし言われたら辛すぎる。だから怖い。だってもう傷つきたくないし。

勿論これもだたの憶測でしかありません。
でももしそうだったとしたら、世間から自分の作品が受け入れられたのなら、純粋に嬉しいと思ったはず。
まあ私が割とそういう人間だからって事もあるから、ひょっとしてそうなんじゃないかなって気がしただけです。
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(C)2016 Maloof Collection, Ltd.

私が漫画家を諦めてひっそりとWEBで公開したのもそれに近いのかもしれないね。
私の場合、脳内に垂れ流すばっかりでちっとも形にしてないぶん、マイヤー氏には足下にも及ばないのは明らかですけどね・・。
あーいかんね。もっと自分の世界を形にしないといけないね。

公開するかどうかは別にして(え



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posted by KS(Koumei Satou) at 20:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする